私たちの使命
私たちは、熊本県御船町で計画されている産業廃棄物処理施設の建設に対し、 環境保全と住民の安全の観点から慎重な検討を求めています。 清流と緑豊かな山々は、一度失われると二度と戻りません。
計画の懸念点
水源地への影響をはじめ、様々な懸念があります。
01. 水質汚染のリスク
計画地は重要な水源涵養地域に位置しています。万が一の事故による地下水や河川への汚染は広範囲に影響を及ぼします。
02. 生活環境への影響
大型車両の通行増加による騒音・振動、粉塵や悪臭など、近隣住民の平穏な生活が脅かされる可能性があります。
03. 生態系の破壊
希少な動植物が生息する御船の山林を切り開くことで、貴重な生態系バランスが崩れる恐れがあります。
専門的視点から整理した
計画の構造的な問題点
準備書縦覧段階で提出する意見書にそのまま使えるよう、論点を整理しました。
水源上流での開発は、下流域のすべての生命に影響を及ぼします。
関連動画
問題の本質を動画で解説します。
Ⅰ. 構造的な弱点
「濃度」ではなく「総量」を示していない問題
なぜ問題なのか:
排出濃度が基準値以下でも、大量の水が流れ続ければ、有害物質の「総量」は蓄積し、環境容量を超えてしまう恐れがあるからです。
排水基準について、単なる「濃度規制」の順守にとどまり、環境への累積負荷を示す「総量規制」の観点からの評価が欠落しています。長期間にわたる大量排水が、下流域の底質や生物濃縮に与える長期的な影響について、総量計算に基づいた予測評価を示すべきです。
「放流ゼロ」という説明のあいまいさ
なぜ問題なのか:
「基本は放流しない」としつつ、「緊急時や大雨時は除く」といった例外規定が広範であれば、実質的な汚染リスクは解消されていないからです。
事業者は「クローズドシステム(外部放流なし)」を強調していますが、想定外の豪雨やシステム不具合時におけるオーバーフロー(越流)の可能性と、その際の汚染防止策についての記述が抽象的です。「放流ゼロ」の前提条件が崩れた際の最悪のシナリオ(Worst Case Scenario)を具体的に示し、その影響評価を行ってください。
Ⅱ. 規模と目的の矛盾
「住民のため」という説明と数字の不一致
なぜ問題なのか:
地域貢献を謳いながら、処理される廃棄物の大半が町外・県外から持ち込まれるものであれば、地元への負担だけが残る構造だからです。
本計画の処理能力は、御船町あるいは上益城郡内で発生する産業廃棄物量を遥かに上回っています。処理対象の大部分が広域からの搬入に依存する計画であれば、地元住民が負担する環境リスクと、地域への公益性(メリット)のバランスが著しく欠如しています。搬入エリアと内訳の妥当性について明確な根拠を示してください。
「災害対応」を理由にするなら規模が過剰
なぜ問題なのか:
災害廃棄物処理は一時的な需要であり、それを根拠に恒久的な巨大施設を作ることは論理的に無理があるからです。
事業者は施設計画の必要性として「災害廃棄物の処理」を挙げていますが、災害は不定期な事象であり、恒常的な巨大処理施設の建設根拠としては不十分です。平常時の稼働率維持のために、将来的に不適切な廃棄物を広域から集めざるを得なくなるリスクについて、事業者の見解を求めます。
Ⅲ. 水・大気・PFASの懸念
PFASについて「測っていない」こと自体が重大
なぜ問題なのか:
現代の廃棄物処理において、有機フッ素化合物(PFAS)のリスク評価は必須ですが、調査項目に含まれていない場合、安全性が根底から問われます。
近年の環境行政において最重要課題となっている有機フッ素化合物(PFAS)類について、本準備書では調査・予測の対象項目に含まれていません。搬入予定の廃棄物にPFASが含まれる可能性を否定できない以上、地下水および排水におけるPFAS類のバックグラウンド調査および影響予測を直ちに追加実施すべきです。
盆地地形と大気滞留の評価不足
なぜ問題なのか:
御船のような盆地・谷地形では、汚染物質が拡散せずに滞留しやすく、平野部のシミュレーションモデルが通用しないからです。
計画地周辺は山に囲まれた盆地状の地形であり、風が弱く大気が滞留しやすい特性があります。一般的な平坦地を想定した大気拡散シミュレーションでは、逆転層形成時の高濃度滞留等が過小評価される恐れがあります。現地の地形特性と気象条件(無風・弱風頻度)を精緻に反映した再予測を行うべきです。
工場由来と車両由来の汚染を分けていない
なぜ問題なのか:
施設そのものからの排煙だけでなく、出入りする大量のディーゼル大型トラックが撒き散らす排ガスも、大気汚染の大きな要因だからです。
大気質への影響評価において、施設稼働に伴う排ガスだけでなく、搬入出車両(大型ディーゼル車等)の走行に伴う窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)の排出負荷を、施設周辺の通学路や住居地域において合算して評価しているか不明確です。移動発生源からの負荷を含めたトータルの大気汚染リスクを示してください。
Ⅳ. 災害リスクと立地問題
災害時の「最悪ケース」を示していない
なぜ問題なのか:
近年頻発する線状降水帯や巨大地震に対し、「想定内」の基準で設計されていると、破綻するリスクが高いからです。
近年の気候変動による「線状降水帯」の発生や、断層帯に近い立地条件であることを踏まえると、従来の確率雨量や耐震基準に基づくだけでは安全確保として不十分です。想定外の豪雨による法面崩壊や、調整池の機能喪失といった「複合災害」を想定したリスク評価と、それに対する具体的な防災計画を提示してください。
Ⅴ. 交通・生活環境への影響
交通量は「平均」ではなく「生活実感」で評価すべき
なぜ問題なのか:
1日の「平均」通行量が増えるのではなく、朝夕の通学・通勤時間帯に大型車が集中することこそが、住民の危険に直結するからです。
工事期間中および供用開始後の大型車両通行について、準備書では「1日あたりの平均台数」で評価されていますが、生活実感と乖離しています。登下校時間帯や通勤時間帯への車両集中(ピーク時の交通負荷)による渋滞発生や事故リスクについて、時間帯別の詳細な予測と回避策を明示してください。
「安全」と「安心」を混同している
なぜ問題なのか:
「法的に安全(基準内)」であることと、住民が「安心して暮らせる(心理的・社会的影響がない)」ことは全く別問題だからです。
環境影響評価は、単に法令基準を満たせばよいというものではありません。本計画地周辺には学校や住宅地が存在し、風評被害や精神的苦痛といった社会的影響が懸念されます。これら「生活環境の保全」の観点から、住民不安を払拭するための具体的なコミュニケーション計画と、モニタリング体制の担保が不足しています。
Ⅵ. 手続き・信頼性の問題
将来の受入量増加を止める保証がない
なぜ問題なのか:
一度施設ができてしまえば、なし崩し的に処理量や品目が増やされる懸念があり、その歯止め策が提示されていないからです。
施設計画の変更可能性について懸念があります。将来的に処理品目の拡大や処理能力の増強が行われないという法的拘束力のある保証がありません。環境保全協定の締結など、将来にわたって計画遵守を担保する具体的な仕組みが提示されない限り、本準備書の予測評価の前提条件自体が信頼できません。
用地・合意形成が未完のまま進んでいる問題
なぜ問題なのか:
手続きを進めること自体が目的化しており、肝心の地域住民との合意形成や用地取得の目処といった土台が軽視されているからです。
環境アセスメント手続きと並行して行われるべき地域住民への説明と合意形成が著しく不足しています。周辺自治会や利害関係者からの反対意見が多数ある中で、建設計画ありきで準備書手続きを進めることは、環境影響評価法の趣旨である「住民等の意見の反映」を軽視するものであり、手続きの正当性に疑義があります。
まとめ(意見書にそのまま使える結論)
上記の点について不明点・未評価項目が多く、環境への影響を適切に判断できる情報が揃っていません。環境保全の見地から、本計画は見直し、または十分な再調査を行うべきです。
※本ページは、公開資料および縦覧資料に基づき、市民の立場から環境保全の観点で整理したものです。
※特定の個人や団体を誹謗中傷する目的ではありません。
自然との共生を目指して
開発を否定するわけではありません。
しかし、かけがえのない自然を犠牲にしてまで優先すべきものなのでしょうか。
私たちは「持続可能な御船町」を目指し、対話を続けていきます。
あなたの声が必要です
この問題は、地域住民だけの問題ではありません。
署名活動や意見書の提出にご協力ください。